「正社員と非正規社員の待遇差が、労働契約法で禁じられている「不合理な格差」にあたるか否かが争われた訴訟の控訴審判決で、東京高裁は、2019(平成31)年2月20日、非正規社員(契約社員)にも退職金の一部を支給すべきだとする判断を示した」といった報道がありました。
提訴していたのは、ある地下鉄の運営会社の子会社(駅売店)で販売の業務をしていた元契約社員の女性4人。
東京高裁の裁判長は、企業が有期契約労働者に対する退職金制度を設けなくても、「人事施策上、一概に不合理とはいえない」とする一方、同社の契約は原則更新され、定年も定められていたと指摘。定年まで10年近く勤務していた2人については、退職金を「一切支給しない」のは不合理として、正社員の25%に相当する額を支給するよう命じたとのことです。
このほか、住宅手当や褒賞などについても支給を命じましたが、基本給や賞与などの金額の格差については合理性があると判断したようです。
結果、一部手当の差額のみ認めた一審判決が変更され、子会社側は、退職金などを含む計約220万円を支払うように命じられました。契約社員側の弁護団は、「同種の訴訟で退職金の支払いを命じたのは初めて」とコメントし、これを大きく取り上げる報道もありました。この判例については、詳細が公表されましたら、改めて紹介させていただきます。
なお、正社員と非正規社員の待遇差をめぐる訴訟で、最近、待遇差が不合理とされる範囲が広がっています。同一労働同一賃金の実施に向けた法改正が決まっていることが影響しているかもしれません。この法改正が施行されれば、この傾向にさらに拍車がかかりそうですね。
同改正の施行(2020年4月〔中小企業は1年遅れ〕)に向けて、各企業で準備を進めておく必要があります。
〔参考〕同一労働同一賃金の実施に向けた法改正について、厚生労働省が特集ページを設けていますので、ご参考になさって下さい。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html