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2017/02/11 違法な時間外労働や過労死 報道は後を絶たず

   働き方改革が注目される中、有名企業における違法な時間外労働、過労死といったニュースも後を絶ちません。
ここ数週の間にも、次のような報道がありました。

□大手旅行会社が従業員に違法な長時間労働をさせていたとして、東京労働局の過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)が、労働基準法違反の疑いで同社を強制捜査。東京労働局は法人としての同社と労務担当幹部の書類送検に向け、捜査を進めている。
・同社では、複数の店舗で、事前に労使協定で取り決めた時間外労働の上限を超える時間外労働をさせていた疑いがあるとのことです。同社に対しては以前から労働基準監督署が何度か是正勧告を出していたが、改善が見られないため強制捜査に踏み切ったとされています。

□大手電機メーカーの下請け会社の契約社員が、夜勤明けの帰宅途中に意識を失い、くも膜下出血で死亡。管轄の福井労働基準監督署は長時間労働による過労が原因とし、今年1月31日付で労災認定していた(2月9日に遺族側が会見を開き判明)。
・死亡した契約社員は、午後11時~午前7時15分の雇用契約でしたが、早出や居残りが常態化し、亡くなる前の2か月間の時間外労働はタイムカードの記録では83時間と81時間だったとのことです。下請け会社は、契約社員の勤務時間を調整するため、残業代を翌月に繰り越す処理などをしていたようで、遺族の代理人である弁護士は、「タイムカードで労働時間を把握しながら無理な労働を続けさせていた。労務管理が極めて悪質。系列のトップ(大手電機メーカー)も下請け会社の社員の労働環境に配慮すべきだ」と指摘したそうです。遺族は、下請け会社に対し損害賠償請求を検討しているとのことです。

働き方改革として、「同一労働同一賃金」も重要かもしれませんが、こういう報道が後を絶たないことを考えると、やはり、「時間外労働の上限規制」が最重要・最優先と感じますね。

  政府の働き改革実現会議などの動きをみると、上限を設けることは間違いないという状況ですが、「具体的に何時間に設定するか」が最大のヤマ場ですね。今後の動向に注目です。

 〔確認〕現時点での政府の方針
・36協定で定める時間外労働の上限を、原則として「月45時間、年360時間」と規定。
・その上で、企業の繁忙期に対応できるよう、1年のうち6か月までは例外を設け、「月100時間」、「2か月の月平均80時間」までの時間外労働を認める。
・その場合でも、時間外労働を「年720時間」、「月平均60時間」以内に抑えるよう義務づけ。違反に対しては、罰則を適用する。


  同一労働同一賃金 法整備の議論を開始

  今月7日、第12回「同一労働同一賃金の実現に向けた検討会」が開催され、その資料が厚生労働省から公表されました。

昨年末に「同一労働同一賃金ガイドライン案」が策定され話題になっているところですが、これに基づく法整備の議論がスタートしました。同検討会では、次のような「法整備に向けた論点(パート・有期雇用関係)」が示されています。

1.司法判断の根拠規定の整備関係
 〇現行法制は、「司法判断の根拠規定」として十分に機能を果たしているか。(規定の明確性等)
 〇比較対象労働者をどのように定義するか。

2.説明義務の整備・いわゆる「立証責任」関係
 〇説明義務の在り方(意義・説明の時期・具体的内容等)
 〇いわゆる「立証責任」の実態
 〇待遇差に対する規範の在り方(合理/不合理)
 〇いわゆる「立証責任」と説明義務との関係性

3.その他(履行確保の在り方等)
 〇非正規雇用労働者を含む労使のコミュニケーションの在り方(個別労使・集団的労使)
 〇司法による待遇改善と行政ADR(裁判外紛争解決手続)・報告徴収等による待遇改善の利点・欠点
 〇法制の枠組みの在り方/パート-有期雇用の間の規制レベルの違い
 〇法整備とガイドライン案の関係性(法的根拠・法的効力)

 安倍総理は、今月初めに開催された「働き方改革実現会議」の席でも、「同一労働同一賃金の法制度の在り方について大切なことは、不合理な待遇差の是正を求める労働者が、最終的には、実際に裁判で争うことが可能な法制度とすることだ」と述べており、労働者視点での法的担保を築くということが、法整備の議論の原点といえそうです。それを実現すべく、今後、上記の論点が整理されていくことになると思われます。

今国会で、同一労働同一賃金に関する法案(パートタイム労働法、労働者派遣法などの改案)の審議ができるのか?今後の動向に注目です。

詳細は、下記サイトでご確認下さい。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000150882.html
 ※「法整備に向けた論点(パート・有期雇用関係)」については、「資料1」参照

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