「新入社員が過労自殺した大手広告会社の違法残業事件で、地方検察庁(東京地検)が法人としての同社を労働基準法違反の罪で略式起訴する方針を固めた」という報道がありました。
なお、同社の幹部や上司ら書類送検された社員は、違法な長時間労働をさせたと認定した上で、不起訴処分(起訴猶予)とする方針。同社の3支社でも違法残業をさせたとして社員が書類送検されたが、これについても不起訴処分(起訴猶予)とし、捜査は終結する見通しとのことです。
この事件、一昨年12月に過労自殺が起こり、昨年9月に労災認定。これにより世間の注目を集め、その後、厚生労働省が過重労働撲滅特別対策班を投入し強制調査。昨年の暮れから本年にかけて書類送検が相次ぎ、社会問題にまで発展しました。
労使協定の上限を超える違法な長時間労働をさせたことが原因で、過労自殺に至ったということで、この事件を契機に、「時間外労働の上限規制(罰則付き)」の議論が本格化したといってもよいでしょう。今後、このような事件が起こらないことを願うばかりです。
〔確認〕
この事件の渦中で、「『過労死等ゼロ』緊急対策」を講ずることとされ、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドラインの策定」、「労働基準関係法令違反に係る公表(書類送検された企業の企業名などの公表)」などのが実施されています。
詳しくは、こちらをご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html
※労働基準関係法令違反に係る公表については、原則として毎月1回は更新されることになっており、最近では、今月20日に更新されています。
LGBT 職場での対策も必要かもしれません
今月中頃、新聞・テレビなどの報道機関において、LGBTの話題がいくつか取り上げられました。
ひとつは、「あるフィットネスクラブにおいて、性同一性障害で女性への性別適合手術を受けた会員が、男性更衣室などの使用を求められ、人格権を侵害されたなどとして、クラブの運営会社に慰謝料などを求めた訴訟が、地方裁判所で和解した。」というものです。
具体的な和解条項は非公表ですが、裁判長は「性自認を他者から受容されることは人の生存に関わる重要な利益で、尊重されるべきだ」としてクラブ経営会社側に改善を求めたとのことです。また、「文部科学省は、小中学校で2020年度から順次実施される次期学習指導要領の解説書に、LGBTへの配慮も新たに盛り込んだ。」といった報道もありました。
LGBTとは、レズビアン(女性同性愛者)、ゲイ(男性同性愛者)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(性同一性障害等で、心と体の性が一致しない人)の頭文字を取った言葉です。
アセクシュアル(他者に対して恋愛感情も性的感情も向かない者)等も含む「性的マイノリティ(性的少数者)」の総称として使われることもあります。
上記の訴訟は、顧客への対応が問題となったものですが、社員への対応についても考えてみましょう。
日本労働組合総連合会(連合)が、昨年、日本初となるLGBT関連の職場意識調査を実施・公表しましたが、これによると、働く人のうち、LGBT等当事者の割合は8%(おおむね13人に1人)とのことでした。
また、今年になって、日本経済団体連合会(経団連)も、LGBTへの企業の取り組みに関するアンケート調査を実施。5月にその結果を公表しています。これによると、調査対象となった大企業では、約4分の3の企業が、社内の人材に関して、既にLGBTに関して何らかの取組みを実施または検討しているとのことです。 当てはまる取組みをみると、社内セミナー等の開催、社内相談窓口の設置、採用活動におけるLGBTへの配慮、性別を問わないトイレ等職場環境の整備などが上位を占めています。
地方裁判所ではありますが、LGBTも「尊重されるべきだ」とされたことや、上記の調査結果をみると、LGBTのことは無視できない問題といえそうです。
職場での対応として、さすがに、いきなり、性別を問わないトイレや更衣室などの職場環境の整備を行うことは難しいでしょうが、社内セミナーなどでLGBTに関する理解を深めておくといった取組みは必要かもしれませんね。調査結果については、こちらをご覧ください。
<LGBTに関する職場の意識調査の結果(連合)>
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20160825.pdf