厚生労働省は、今月16日、「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表しました。
「個別労働紛争解決制度」は、個々の労働者と事業主との間の労働条件や職場環境などをめぐるトラブルを未然に防止し、早期に解決を図るための制度で、「総合労働相談」、労働局長による「助言・指導」、紛争調整委員会による「あっせん」の3つの方法があります。厚生労働省は、毎年度、これらの制度の利用状況などを取りまとめ、公表しています。
<平成28年度の状況のポイント>
●総合労働相談、助言・指導申出、あっせん申請の件数はいずれも前年度と比べ増加
●総合労働相談件数は113万741件で、9年連続で100万件を超え
●民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数、あっせんの申請件数のすべてで、「いじめ・嫌がらせ」がトップ
厚生労働省では、今回の施行状況を受けて、総合労働相談コーナーに寄せられる労働相談への適切な対応に努めるとともに、助言・指導及びあっせんの運用を的確に行うなど、引き続き、個別労働紛争の未然防止と迅速な解決に向けて取り組んでいくとのこです。「いじめ・嫌がらせ」が個別労働紛争のトップということは、知っておきたいところです。このような状況をみると、各企業において、各種ハラスメントの防止対策などに万全を期す必要があるといえそうです。
詳しくは、こちらをご覧ください。
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000167727.html
違法残業で大手旅行会社を書類送検 度重なる是正勧告無視
「大手旅行会社が従業員に違法な残業をさせていたとして、所轄の都道府県労働局が、今月14日、労働基準法違反の容疑で、営業担当の幹部と法人としての同社を書類送検した」という報道がありました。
同社の違法残業については、平成22年~27年の間に、各地の労働基準監督署が是正勧告を約10回行っており、昨年7月には、「過重労働撲滅特別対策班(通称かとく)」も動き、強制捜査を実施。書類送検は時間の問題と思われていました。
今回の送検の容疑は、36協定で定めた上限を超えて違法な長時間労働をさせた疑い。繁忙期に、従業員2人に対し、最大で月約100~110時間に及ぶ時間外労働をさせていたとのことです。
本年5月から、厚生労働省のホームページに、労働基準関係法令違反で書類送検を行った企業の名称などを公表する制度が開始され、世間の注目を集めていますが、今回、書類送検された企業も、当然、そこで公表されることになりそうです(更新は1か月ごと)。
ブラック企業リストとも言われており、そこで公表された企業は、イメージダウンなどの社会的制裁を受けることになります。やはり、法令遵守の意識は重要ですね。労働時間関係のルールについては、少なくとも、「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日策定)」を遵守する必要があります。
〔確認〕上記のガイドラインのリーフレット
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/151106-06.pdf
参考:労働基準関係法令違反に係る公表事案(厚労省)
http://www.mhlw.go.jp/kinkyu/dl/170510-01.pdf
助成金詐欺事件 実質経営者に実刑判決
「国の助成金をだまし取ったなどとして、詐欺と法人税法違反の罪に問われた会社の実質的経営者の判決が、今月14日、地方裁判所であり、裁判官は、同被告に、懲役2年8月、法人としての同社に罰金2800万円を言い渡した。」という報道がありました。
判決によりますと、同被告は平成23年~25年に、公判中の会社社長と共謀し、「中小企業緊急雇用安定助成金(当時)」の受給要件を満たしていないのに所轄の都道府県労働局に虚偽の申請をし、約4700万円をだまし取り、また、架空の業務委託手数料を計上するなどして、法人税約1億1900万円を脱税したとのことです。
不正受給額などが巨額であることもあり、初公判の時から注目されていました。今後、雇用保険二事業の助成金の不正受給について、厚生労働省などからの注意喚起が強化されるかもしれませんね。