ホーム > トピックス(バックナンバー23) > 2017/03/28 労災事故で書類送検、報道が相次ぐ

2017/03/28 労災事故で書類送検、報道が相次ぐ

 3月最後の週末、「労災事故で書類送検」という報道が相次ぎました。

概要は以下のようなものです。
・大手の乳製品会社の工場で、従業員が作業中に機械に体を挟まれて死亡した事故で、所轄の労働基準監督署が今月24日、労働安全衛生法違反の疑いで、会社と工場長を書類送検。昨年8月に、同工場内で発生した機械の不具合を修理する作業の際、機械の運転を停止せずに行わせたとのこと。

・繊維加工場で、従業員が作業中に機械に体を挟まれて死亡した事故で、所轄の労働基準監督署が今月24日、労働安全衛生法違反の疑いで、会社と社長および工場長を書類送検。今年1月、同社の加工場で、機械のローラー部に溶剤を塗る際、機械を停止させないまま作業させたとのこと。なお、同社では、平成19年と平成22年にも同様の労災事故を起こし、是正勧告を受けていたようです。

・大手の運輸会社の支店で、派遣作業員がフォークリフトにひかれて右足を切断するなどの重傷を負った事故で、所轄の労働基準監督署が今月24日、労働安全衛生法違反の疑いで、会社と支店長を書類送検。昨年11月に、同支店の作業現場でフォークリフトを使った運搬作業をしているにもかかわらず、派遣作業員を立ち入らせ、現場には誘導員が配置されていなかったとのこと。


いずれも、安全対策・防止措置を怠っていたことにより生じた労働災害ですね。労働災害の防止については、ちょっとした意識で変わることも多いので、ごく基本的な労働災害の防止措置を紹介しておきます。
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/110222-1_001.pdf


なお、高年齢労働者については、労働災害などの発生の割合が高まります。今月に入ってから、次のようなパンフレットが公表されています。安全衛生対策全般の資料ですが、参考までに紹介しておきます。
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000156037.pdf


 同一労働同一賃金 格差是正訴訟で非正規側敗訴(東京地裁) 

  同じ仕事をしながら正社員との給与格差があるのは不当だとして、鉄道の駅構内の売店で働く契約社員や元契約社員4人が、売店の運営会社に賃金の差額分など計約4,500万円の支払いを求めた訴訟で、今月23日、東京地方裁判所は、請求をほぼ全面的に棄却する判決を言い渡したという報道がありました。

原告側の主張は、「売店では同じ仕事をしているのに、契約社員の年収は正社員の6割程度。福利厚生も全く異なる」、非正規社員への不合理な労働条件を禁止した労働契約法20条に違反するというものでした。

しかし、裁判長は、「売店業務に従事する正社員はごくわずかで、正社員の大半は会社の各部署で多様な業務に従事している。売店業務でも、正社員は複数の売店を統括する業務に従事するなどしているが、契約社員は同役職には就かない」と指摘。そのほか、正社員は配置転換や職種転換があるが、契約社員にはないことを示し、「業務内容や責任の度合いに照らすと、待遇の差は不合理とはいえない」と判断したようです。

“契約社員と正社員の間の責任の度合いが大きく異なる”というのがポイントといえそうです。


働き方改革の一環で、同一労働同一賃金の実現に向けた法整備などが進められていますが、このような訴訟の際に、明確な判断基準となり得る規定などが設けられるのでしょうか。今月中に取りまとめられる予定の「働き方改革実行計画」の骨子案では、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善について、法改正の方向性を次のように示しています。

(法改正の方向性)
①労働者が司法判断を求める際の根拠となる規定の整備
②労働者に対する待遇に関する説明の義務化
③行政による裁判外紛争解決手続の整備
④派遣労働者に関する法整備
 ガイドラインも正式に策定されると思いますが、どこまで具体化されるのか、今後の動向に注目です。

なお、ここで紹介した訴訟もそうですが、ポイントとなった“責任の度合い”を計る尺度は、やはり、実態に基づいた人の判断に頼るしかないというのが実情でしょう。

政府の考えは、説明義務を強化して話の食い違いを防止し、いざ争いになってしまったときの解決手続のバリエーションを増やす、さらに、司法判断などの基準を明確にしておくといった感じですね。

 〔再確認〕働き方改革実行計画(骨子案)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/hatarakikata/dai9/siryou2.pdf
 ※働き方改革実現会議では、この内容を取りまとめて、本年3月中の「実行計画」の策定を目指すとのことです。政府はこれを踏まえ、関連法の改正法案を国会に提出するなど、計画を具体化する作業に入る構えです。

ページ上部へ